法令ギネス

 

1 短い法律

法律の長さを検索するのも、難しいが、「○○法は廃止する」といった廃止法律ではなく、効力のある規定として短い例として、

2       記名ノ国債ヲ目的トスル質権ノ設定ニ関スル法律(明治37年法律第17号) 29

3       商法中署名スヘキ場合ニ関スル法律(明治33年法律第17号) 31

4       失火ノ責任ニ関スル法律(明治32年法律第40号) 50

このうち、商法中署名スヘキ場合ニ関スル法律は、会社法制定に伴う法律整理で平成185月に廃止された。

これらの法律は、題名が付されておらす(現在では必ず題名を付す)。また附則もなく、本則のみであるから、今後新しく法律が、制定されても題名や附則まで数えるとこれより短いものはでないであろう。

政令レベルまでみると「元号を改める政令(昭和64年政令第1号)」の本則は、最後の句点まで数えて10字、題名附則まで数えても40字というのがある。

 

2 長い法律

長い法令の基準も難しいが(字数を数えるのが困難)、条数では民法の第1044条が現行稿法では最高であろう。なお、いわゆる旧民法は第1146条まであった。もっとも枝版や削除された条もあるのでこれはあくまで最後の条の番号である。

もっともこのたびの中央省庁改革に伴って各種の法律を一括改正した「中央省庁等改革関係法施行法(平成111222日法律第160号)は、第1344条まであるが、これは改正規定と経過規定の集大成だから、別のものであろうか。

省令まで探すと、特定計量器検定検査規則(平成5年通商産業省令第70号)が第1027条まである。1000条を超えるのは、この3法令のようである。

別表等を含めた全体では、現行の法律では関税定率法であろう。これは、各種の商品を約7000に区分して税率を定めているために膨大な量となっているためである。

また、改正法までみると多数の法律を一括改正したものが、分量が多いことになるが、これらの筆頭は、次のいずれかであろう。

HS実施のための

◎ 商品の名称及び分類についての統一システムに関する国際条約の実施のための関係法律の整備に関する法律

WTO協定実施のための

◎ 関税定率法等の一部を改正する法律(平成6年法律第118号)

 

◎ 地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律

 中央省庁等改革関係法施行法

このうち、上の二つが関税局税関関係である。

3 枝番

法令に条文が追加されるといわゆる枝番の形になるが、これの数の多いものは、「の2」と続く番号では、地方税法に第72条の116という条がある。

また「第3条の2の2」のように枝番の枝番がつけられることがあるが、さらにその上をいって、枝番の枝番の枝番の例は、繭糸価格安定法(昭和26年法律第310号。現在は生糸の輸入に係る調整等に関する法律と題名変更) に第12条の13の3の2というのがどうも唯一である。(昭和57年法律第88条によって追加された条文。この条は昭和60年法律第24号による改正で、一部改正のうえ第12条の8となった。)

4 項数

項数の多い法令としては、次のものがあり、最大は第127項まである。

 

会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第192条 第42項

会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第216条 第65項

会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第221条 第60項

会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第230条 第33項

会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第230条 第54項

会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第232条 第38項

会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第233条 第49項

市町村の合併の特例等に関する法律 第5条 第33

住民基本台帳法別表第一から別表第五までの総務省令で定める事務を定める省令 第1条 第127

住民基本台帳法別表第一から別表第五までの総務省令で定める事務を定める省令 第5条 第32

農林水産省組織規則 第286条 第31

阪神・淡路大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律施行令 第18条 第42

阪神・淡路大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律施行令 第21条の5 第43

石油パイプライン事業の事業用施設の工事の計画、検査等に関する省令 第12条 第32

廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則第1条の2 第53

市町村の合併の特例に関する法律 第4条の2 第33

財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則 第8条 第39

国際規制物資の使用等に関する規則 第7条 第33

租税特別措置法 第70条の4 第32

租税特別措置法 第70条の6 第38

租税特別措置法施行令第22条の8 第31

租税特別措置法施行令第25条 第31

租税特別措置法施行令第38条の4 第42

租税特別措置法施行令第39条の5 第33項

租税特別措置法施行令第39条の7 第60

租税特別措置法施行令第39条の39 第36

租税特別措置法施行令第39条の106 第49項

租税特別措置法施行令第40条の2の2 第35項

租税特別措置法施行令第40条の6 第55項

租税特別措置法施行令第40条の6 第55項

租税特別措置法施行令第40条の7 第60項

租税特別措置法施行規則 第22条の12 第37項

租税特別措置法施行規則23条の7 第34

租税特別措置法施行規則23条の8 第31

自然公園法施行規則 11 34

乳及び乳製品の成分規格等に関する省令 第40

地方税法第53条 第51項

地方税法第72条の13 第31

地方税法第321条の8 第41

地方税法第349条の3 第38項

地方税法施行令 第9条の7 32

地方税法施行令第48条の13 38

人事院規則1−4(現行の法律、命令及び規則の廃止) 第96

証券取引法 第2条 第32

関税定率法第7条 第33

関税定率法第8条 第37

戦没者の父母等に対する特別給付金支給法附則 第59

戦没者等の妻に対する特別給付金支給法附則 第50

未帰還者留守家族等援護法附則 第49

税理士法附則 第36

地方税法附則第11条 第38

地方税法附則第15条 第57

地方税法施行令附則第6条の16 第35

地方税法施行令附則第11条 第77

労働者災害補償保険法施行規則附則 第50

地方税法施行規則附則第条 第106

 

廃止された法令では、

鉱山保安規則第2条 第38

農林水産省組織規程第条 第41

農林水産省組織規程第486条 第45

運輸省組織規程第34条の23 第39

全面改正前の附則で長いのが、

動物用医薬品等取締規則附則 第42

また次のものは、かつては109項まであったが現在は項がない条になっている。

道路運送車両の保安基準第58条 第109

次も全面的改正され短くなった。

道路運送車両法施行規則附則 第104

 

 

5 号数

号数は、項と異なり枝番、削除があるが、単に第○号の数では、最大は多分これだろう。

 

公益通報者保護法別表第八号の法律を定める政令(条の区分はない)が第452

他に多いのは、

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第二条第十五項に規定する指定薬物及び同法第七十六条の四に規定する医療等の用途を定める省令第1条が第281

 

中央省庁等改革に伴い関係政令等を廃止する政令(条の区分はない)が第171

国土交通省設置法第4条が第128号まで、

厚生労働省設置法第4条が第111号まで、

公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律第二条第一項第三号の法人を定める政令(条の区分はない)が第110

毒物及び劇物指定令第2条が、第110号まで、

農林水産省設置法第4条が第87号まで、

保険業法第333条が第75号

 

また過去の法令では、次のものがある。地方公共団体手数料令は、地方公共団体の手数料の標準に関する政令の制定に伴い廃止され、新しい政令では条の表の形式となり、項目数も100以下になっている、また各省の設置法も中央省庁再編で全面的に新しくなり、所掌事務の規定もだいぶ簡素になった。

地方公共団体手数料令第1条が、第213号まで、

運輸省設置法第3条の2が、第186号まで、

農林水産省設置法第4条が、第160号まで、

厚生省設置法第5条が、第112号まで

 

 

6 イロハ

 

各号列記は第1号から第2号、第3号となり、その下は、通常は、イロハであるが金融庁設置法第4条第1項第3号の下の細分なんと「イ」から「ア」まである。金融庁設置法第4条第1項第3号は、金融庁の事務として、検査等の対象者を規定するもので、金融関係の新業態ができる都度増えていく。

第一号であれば枝番で第一号の二(「一の二」と表記)とできるが、イロハには枝番はないので、追加すれば伸びていく。

法律ではこれが最大で、次が放送法第29条第1項第1号でイからオまでがある。放送法第29条第1項第1号は、日本放送協会の経営委員会の議決事項の列記である。

告示では、

診療報酬の算定方法(平成二十年三月五日)(厚生労働省告示第五十九号)

A104 特定機能病院入院基本料(1日につき)

イロハを使い切ってイイ、イロ、イハ、イニ、イホ、イヘまでとなっている。

この規定は、基本料に加算する事項の列記である。

 

7 かっこ数字、(184

号の下の細分は、通常イロハで、その下が⑴、⑵、⑶・・なる。ただし毒物及び劇物指定令第2条は、各号の下がいきなり⑴、⑵となる。そしてこの第32号は、なんと⑴、⑵・・(184)となっている。(184)は縦書きで1字の扱い。この規定は劇物として「有機シアン化合物」を指定して、これから除く化合物を⑴、⑵・・(184)で指定している。今後も増える可能性は多い。たしかにイロハにしたらイロハはおろかイイ、イロも使い切り、ロイ、ロハ、更にハイ、ハロまでいくことになり使えなかったと思われる。

本則のなかでは、毒物及び劇物指定令第2条に続くのは

内閣府本府組織令(平成十二年政令第二百四十五号)第3条第3号であり、これもその下がイロハではなく、⑴、⑵、⑶・・で(43)まである。政策統括官の職務の関係を定めるものである。

 

本則のなかでは毒物及び劇物指定令第2条が最大であるが、別表までみると

 

港湾法施行令(昭和二十六年政令第四号)別表第五の第3号のなかに(266)というのがある。この規定は、非常災害が発生した場合の緊急確保航路を指定するもので第3号は、瀬戸内海に係る緊急確保航路を定める者で、関係する地点が266あるということによる。

海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律施行令(昭和四十六年政令第二百一号)別表第一は、海洋環境の保全の見地から有害である物質を指定するものであるが、この第1号イが(81)、第2号イが(464)、第3号イが(160)まである。

排他的経済水域及び大陸棚に関する法律第二条第二号の海域を定める政令(平成二十六年政令第三百二号)

この政令は、条の区分がなく、本則が、

排他的経済水域及び大陸棚に関する法律(以下「法」という。)第二条第二号の政令で定める海域は、次の表のとおりとする。

となって表が第1号と第2号とでなっており、この第2号が(257)まである。

 

8 楽譜

平成11年8月に制定された国旗及び国歌に関する法律は、国歌を君が代と定めたが、これの別記第二が君が代の歌詞及び楽曲を定めており、楽曲が楽譜(五線譜)で定められている。我が国の法令に楽譜が載ったのはおそらく初めてである。