現在年度末を控え、いわゆるねじれ国会においてガソリン税の暫定措置をめぐって与野党の攻防が続いています。

このなかで現在参議院に民主党が提出している限定的な租税特別措置の延長法案が衆議院に送付された場合、これを政府が提出した「所得税法等の一部を改正する法律案」に対する異なった議決として、民主党案を否決後、政府案の最可決の可能性がとりざたされています。

しかしながら直近の給油法案を含め、再議決は衆議院送付案に対して参議院が修正し、これに衆議院が不同意な場合か、参銀院が否決(みなし否決を含む。)した場合しかありません。

この問題は国会の質疑でもとりあげられていますが、ことがことだけに内閣法制局も衆議院事務局も結論をだせずに、事例がおこったとき議事規則の問題として議長が決する問題と逃げています。

さて民主党提出の参法を政府案に対する異なった議決としない確約がない限り、参法を議決しないと民主党は主張しており、これが現実化することはなさそうですが、仮にこれが強行された場合どうなるでしょうか。

政治的に与野党激突しますが、それより憲法的危機になるのは、衆議院は法案の成立を宣言し、参議院はまだ審議中で成立しないと主張し、国会の意思が両院で異なる見解となることです。

かつて法案の成立が有効化どうか問題になったケースとして警察法の参議院での議決が無効として支出差止め請求をした事件の判決(最高裁大法廷昭和37年3月7日判決(民集第16巻3号445頁)で「裁判所の法令審査権は国会の両院における議事手続の適否には及ばない」と判示しています。しかしこの場合は、衆議院通過し、参議院で混乱のなか議長が可決を宣言しています。その限りでは両院の意思が確定しています。

今回のように仮に法案の成立か否かについて両院の見解が真っ向から対立したら最高裁はどう判断するでしょうか。しれまでの間はそうなるか。憲法的危機というのはそういうことです。

もし仮に本件で再議決要求動議があったら河野議長が議事規則違反として却下することを望みます。議事規則の疑義は、議長が決します。議院にはかることもできますがこれは議長の裁量で、議長が決定すれば議院がこれをくつがえすことはできません。まさかそのとき与党が議長不信任動議はださないでしょうから、これでこの件は終わりです。

せめてそうしてください。